近年、局所密度近似(Local Density Approximation)に基づく第一原理計算に対して、系統的に電子相関効果を取り込む方法として、GW近似と呼ばれる手法が注目を集めている。今年度は、擬ポテンシャル十平面波基底で得られたLDAの一体の波動関数から自己エネルギーやGreen関数を求めるプログラムを開発した上で、これを金属・半導体接合系へ適用し、この系における金属半導体転移の可能性を議論した。金属・半導体接合系における、半導体界面の金属化の可能性については、1970年代のlnksonらの提案以来様々な研究がなされているが、どのような金属と半導体の組み合わせによって実現されるのかという点については明らかでなかった。我々は、この問題を系統的に議論するために、金属側に関してjellium模型、半導体側に典型的な半導体で応用上の観点からも重要なシリコンを採用し、jellum模型の電子密度を変えながら、界面のエネルギーギャップの変化を詳細に調べた。その結果、現実の金属の電子密度としては、かなりうすいと言えるrs=6程度の領域まで、相当のband gap reductionが起こり得ることを明らかにした。 また、最近、FETと呼ばれる構造を物質の界面に作ることにより、electronやhole等のcarrierを従来の方法では不可能な領域までdopeしたという実験が注目を集めている。我々は、五員環構造を含むある種の高分子に対して、LSDA計算を行い、この物質に適切な量のcarrierをdopeすれば、遍歴強磁性になるという理論的提案を行った。
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