本研究では、表面の非線形光学応答を第一原理計算により求める手法を開発し、表面電子状態を反映した非線形光学応答の起源を探ると共に、実験結果の解析方法を確立することによりSHG法の応用分野を開拓することを目的に以下の理論研究及び基礎実験を行った。 1.FLAPW法で求めた表面系の電子状態から線形及び非線形光学応答を計算するプログラムを開発し、Si(111)表面をモデル化したスラブ構造を対象にした計算を行った。線形光学応答の計算結果は、バルクSiの実験データ及び2x1再構成表面特有の【planck's constant】ω=0.5eVの光学吸収をよく再現することが出来た。2次の非線形光学応答の計算では、理想表面及び2x1再構成表面固有の表面電子準位に共鳴してSH応答が増大することが示された。また、Si(111)2x1再構成表面のSH応答の面内異方性の測定結果を計算により見事に再現することができた。これらの計算を通し、本研究の計算手法及び開発したプログラムが妥当であることが確認できた。 2.理論計算との対比に使用する表面SH応答の基礎測定データを得るために、Ge(111)清浄表面及び酸化表面のSH分光測定を行った。清浄表面では【planck's constant】ω=1.35eVに共鳴ピークが初めて観測された。このピークは酸素吸着に伴い消失することから、ピークの起源はダングリングボンドに起因する表面準位が関係した光学遷移と考えられる。また、酸化が進行し熱酸化による酸化膜が形成した段階で、新たに【planck's constant】ω=1.15eVに共鳴ピークが出現することを見出した。このピークは、Geと酸化膜との界面に局在する電子準位との共鳴により現れたと考えられる。 来年度は、Ge表面と光触媒TiO_2表面のSH分光測定データに対応した表面非線形光学応答の理論計算を行い、実験結果の厳密な解析を行う予定である。
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