ポリマー(PVA)と6メチルメロシアニン色素の混合比を1000:25〜0.2、ポリマーと色素とアラキン酸の混合比を1000:5:0〜30および1000:1:0〜6の範囲で変えたJ会合体試料をスピンコート法により作製した。近接場光学顕微鏡(SNOM)を用いてこれらの試料の発光像の測定を行った。SNOMで観測されたJ会合体の形状とサイズは製膜方法、色素濃度、アラキン酸濃度に強く依存した。アラキン酸を混合しない試料ではJ会合体の形状は円形であり、色素濃度の減少によってその平均サイズは520nmから200nmへ減少した。アラキン酸を混合した試料では幅が約330nm、長さが数μm〜数10μmのファイバー状のJ会合体が観測された。これまでメロシアニン色素のJ会合体の形状は円形であると報告されていた。一方、ファイバー状のJ会合体は擬イソシアニン色素でしか知られていない。本研究の結果、J会合体の形状は色素固有のものではなく、製膜方法や製膜条件に依存して変化することが明らかになった。 一方、吸収スペクトルより励起子コヒーレント領域の大きさを求めたところ、本研究で用いたJ会合体ではその大きさは試料によらず10nm×(30〜60)nmであることがわかった。SNOMで観測されたサイズはこのサイズの50〜700個分に相当する。そこでJ会合体の内部構造を調べるためにSNOMを使って発光像の偏光依存性を測定した。その結果、円形のJ会合体の場合偏光方向は一様であった。またファイバー状のJ会合体の場合は偏光方向はファイバーの長さ方向にそろっていた。したがっていずれの場合もJ会合体内部の遷移双極子モーメントの方向は一様にそろっていることがわかった。以上の結果よりJ会合体は励起子コヒーレント領域が遷移双極子モーメントの方向をそろえて集合し、メゾスコピックな構造を形成する階層構造をとることが明らかになった。
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