本年度は混合メロシアニン色素LB膜中のJ会合体に関する研究を行なった。 LB法により6メチル-メロシアニン色素(6Me-DSと略称)とカルコゲン原子が酸素であるメロシアニン色素(DOと略称)を混合した単分子膜を石英基板上に堆積した。6Me-DSは単体でJ会合体を形成するがDOだけではJ会合体を形成することができない。両者を混合すると2種類の色素分子から成る新しいタイプのJ会合体(固溶体)ができるとの報告がある。したがって6Me-DSとDOの混合比を系統的に変化させた膜中のJ会合体の構造を調べれば色素分子の凝集機構の理解が進むと考えられる。 混合膜を[6Me-DS]_<1x>[DO]_xと表記し、xによって混合比を示す。x=0〜0.6では吸収・蛍光スペクトルにJ会合体の形成を示すJバンドが観測された。Jバンドはxの増加とともに高エネルギー側にシフトした。JバンドのシフトはDOの混合に伴いフレンケル励起子のコヒーレンス長が減少することを示している。またxの増加とともにJバンドの吸光度は減少し、モノマー分子のバンドが出現した。x=0.8〜1.0ではモノマーバンドだけが観測された。つまりDOの混合に伴いJ会合体は減少していった。またスペクトルの解析により、J会合体は6Me-DSだけで形成されていてDOはモノマー状態で存在していることが明らかになった。この結果はこれまで考えられていた2種類の色素分子からなる固溶体様のJ会合体の形成を否定する。 次に共焦点レーザー走査顕微鏡を用いた顕微蛍光像測定によりJ会合体とモノマー色素分子が形成する構造を調べた。x≦0.6ではJ会合体とモノマーからなる<20μm^2程度のドメインが形成され、xの増加とともにそのサイズが増大した。ドメイン内部に6Me-DSのJ会合体とDOのモノマーが混在し(相分離)分解能(【approximately equal】500nm)以下の微細構造を形成することがわかった。
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