軟X線ラマン散乱による強相関電子系物質のMott転移近傍における電子相関の研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13740191
• 研究種目: 奨励研究(A)
• 研究機関: 東京理科大学
• 研究代表者: 樋口 透 東京理科大学, 理学部・応用物理学科, 助手 (80328559)
• キーワード: 軟X線ラマン散乱 / Mott転移 / 強相関電子系物質

研究概要

ペロブスカイト型酸化物La_xSr_<1-x>TiO_3のX【greater than or equal】0.95におけるMott転移は、輸送特性の結果から得られる有効質量が増大することから、電子相関(U_<dd>)の寄与が示唆されている。本年度の研究目的は、La_xSr_<1-x>TiO_3の単結晶を作製と共に、微小な変化を捉えるための軟X線ラマン散乱装置の高分解能化をはかり、Mott転移近傍のU_<dd>の大きさを見積もることであった。
本年度は、La_xSr_<1-x>TiO_3単結晶の作製・軟X線ラマン散乱で用いる光学素子の設計と発注・光学調整と予備測定の3つの研究準備を行った。第1に、La_xSr_<1-x>TiO_3のドープ量の異なる3つの単結晶(x=0.90,0.95,1.0)をハロゲンアーク・イメージ炉(FZ法)により作製し、X線回折及び組成分析により評価を行った。第2に、軟X線発光分光器の高分解能化を実現するために、専用の明るい分光器をレイトレースすることによって、光学素子を設計し、実際の軟X線発光分光器に取り付け、高分解能化を実現した。見積もられた分解能は、hv=450eVの励起光に対し、約0.2eV以下の高分解能化を実現することに成功した。実際に予備測定として、LaTiO_3(x=O)の単結晶試料を用いて測定を行い、d-d遷移を観察すると共に、U_<dd>及び結晶場分裂の大きさを実験的に求めることができた。以前、行った低ドープ領域のLa_<0.10>Sr_<0.90>TiO_3と比較すると、U_<dd>は約0.2eV程度大きくなっており、これは、輸送特性から示唆される電子相関の寄与を裏付ける結果を得た。
次年度は、x=0.90,0.95の軟X線ラマン散乱の測定を行い、転移近傍のU_<dd>を見積もり、Mott転移に関するパルクの性質を明らかにする。

研究成果

• [文献書誌] T.Higuchi, T.Tsukamoto, S.Yamaguchi, Y.Ishiwata, N.Sata, M.Ishigame, S.Shin: "Direct evidence of p-type SrTiO_3 by high-resolution X-ray absorption spectroscopy"Physical Review B. 65. 033201-1-4 (2002)
• [文献書誌] T. Higuchi, M. Tanaka, K. Kudoh, T. Takeuchi, Y. harada, S. Shin, T. Tsukamoto: "Electronic structure of Bi_4Ti_3O_<12> thin film soft-x-ray emission spectroscopy"Japanese Journal of Applied Physics. 40. 5803-5805 (2001)
• [文献書誌] M.Hasegawa, T.Higuchi, M.Tanaka, T.Tsukamoto, S.Shin, H.Takei: "Electronic Structure of Delafossite-Type Metallic Oxide PdCoO_2"Metarials Transactions. 42. 961-964 (2001)
• [文献書誌] T.Higuchi, T.Tsukamoto, S.Yamaguchi, Y.Tezuka, S.Shin: "Ti-O Hybridization Effect of Nd-doped SrTiO_3 by Resonant-Photoemission Spectroscopy"Japanese Journal of Applied Physics. 40. L201-202 (2001)
• [文献書誌] T. Higuchi, T. Tsukamoto, N. Sato, K. hiramoto, M. Ishigame, S. Shin: "Protonic Conduction in the Single Crystals of SrZr_<0.95>M_<0.05>O_3(M=Y, Sc, Yb, Er)"Japanese Journal of Applied Physics. 40. 4162-4163 (2001)
• [文献書誌] M.Tanaka, T.Higuchi, K.Kudoh, T.Tsukamoto: "Growth of Bi_4Ti_3O_<12> Thin Film by Two-Dimensional RF Magnetron Sputtering with TiO_2 and Bi_2O_3 Targets"Japanese Journal of Applied Physics. 41. 3/15掲載 (2002)