メゾスコピックな微細構造により、非局在電子の波動関数と、電磁揚の空間分布との両者を操作することが可能である。本年度はまず、昨年度に引き続いて、非局在電子の波動関数における反転対称性の破れの影響について、直角二等辺三角形型の金属量子ドットドツトの二次非線形性を例に考察した。この系では、電子について自由電子近似を用いると固有関数が解析的に求められるため、それを利用して倍周波分極率のスペクトルを数値的に計算し、非零の倍周波分極率を得る為にはドットのサイズに上限があることを確認した。また、そのサイズよりも大きな金属ドットの場合には倍周波分極率が零になることを解析的に示した。 また、微細構造中における電磁場の特異的な空間分布を利用する方法についても検討した。特に、フォトニック結晶スラブに対して、ほぼ垂直方向から光を照射することにより、透過方向に第二調波が生成されることが実験的に確認されている(理化学研究所、石原ら)。この現象に於いて、フォトニック結晶スラブを構成する物質は全て結晶構造に反転対称性を有しており、且つ系のメゾスコピックな形状にも反転対称性があることから、第二高調波生成は基本周波数での電磁場の空間分布の特異性に由来していると考えられるため、この現象に注目し解析を行った。まず、基本周波数でのフォトニック結晶スラブの光学応答を解析し、(単純スラブの場合の解を利用した)マックスウェル方程式の半解析的な解を求めることに成功した。続いて、第二高調波分極の起源を明らかにすることを試みた。具体的には、光学活性媒質に等方的ローレンツ振動子モデルを用い、上述の解を援用することによって、実験結果を説明できることを示した。
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