研究概要 |
磁場の方向を変化させたときの熱伝導率の角度依存性から異方的超伝導体のギャップ構造を明らかにした.特に準2次元的な電子構造をもつ3種類の物質,(1)スピントリプレット超伝導体Sr_2RuO_4,(2)重い電子系超伝導体CeCoIn_5,(3)有機超伝導体к-(ET)_2Cu(SCN)_2の超伝導ギャップの構造を決定できた.その結果,Sr_2RuO_4では超伝導ギャップが零になる部分である「ノード」が伝導面に平行に存在することを突き止め,これまでの結果とあわせることで,もっとも有力な超伝導対称性がd(κ)=Δoz(κx+iκy)(coscκ_z+α)であることが明らかとなった.また,CeCoIn_5およびк-(ET)_2Cu(SCN)_2においては,ノードが伝導面に対し垂直方向に存在することを明らかにし,それぞれの超伝導対称性はd_x2_<-y>2, d_<xy>であることを示すことができた.このようにCeCoIn_5においてその対称性を決定できたことは,異方的超伝導体では高温超伝導体に次いで2番目の例であり,重い電子系超伝導体では初めての例である.また,CeCoIn_5において,低温での超伝導転移が1次転移であることを初めて発見した.このように1次転移が見られる超伝導体はこれまで例はなく,これまで理論的研究しかなかった1次転移に関する理解が進むと考えられる.また,Sr_2RuO_4およびк-(ET)_2Cu(SCN)_2で明らかとなった超伝導対称性は,これまで理論的に議論されているものとは大きく異なり,これらの物質で議論されてきたメカニズムの再考の必要性を強く示唆している.以上,本研究で異方的超伝導体のギャップ構造を明らかにすることで超伝導対称性および発現機構に関して強い制約を与えることができた.
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