圧力誘起超伝導体のギャップ構造を調べるため、圧力下における熱伝導率測定をするための装置開発、および熱伝導率の磁場方向依存性の測定を行った。まず、温度計、圧力媒体等を吟味しその評価を行った。その結果、試料の熱伝導率に対し圧力媒体の熱伝導率が無視できないことが判明し、圧力下において熱伝導率測定に必要な条件である断熱状態を得ることが容易ではないことが明らかとなった。しかしながらその一方でゼロ圧ではあるが熱伝導率をプローブとして超伝導ギャップ構造を調べるための実験方法を確立することができた。これまで超伝導ギャップ構造は高温超伝導体でしか明らかにはなっていなかったが、これにより他の異方的超伝導体のギャップ構造の決定が可能となった。具体的には熱伝導率を磁場の方向を変化させたときの熱伝導率の角度依存性より重い電子系超伝導体CeCoIn_5、有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2、ホウ素炭化物YNi_2B_2C、重い電子系超伝導体PrOs_4Sb_<12>のギャップ構造を明らかにした。特にYNi_2B_2Cのノード構造は、これまで多くの異方的超伝導体でみられていたラインノードではなく、ポイントノードであることを初めて明らかにすることができた。さらに、最近発見された重い電子系PrOs_4Sb_<12>においては超伝導ギャップにポイントノードが存在するだけでなく、少なくとも2つの異なった対称性をもつ超伝導相が存在することを明らかにすることができた。これは複数の超伝導相をもつ超伝導体としては、UPt_3についで2つ目の例である。
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