ホウ化物Ca_1-_xLa_xB_6に見られる強磁性は、高いキュリー温度、非常に小さいモーメント、強磁性の見られるxの範囲が非常に狭いことなどの特異性をもち注目されている。本年度の研究では、この強磁性を励起子の凝縮によるものとしてギンツブルグ・ランダウ理論に基づいて解析した。その結果、母物質CaB_6では時間反転対称性、空間反転対称性ともに破れているが、それらの積は保存しているという対称性を持つことが分かり、その結果として電気磁気効果やマグネトカイラル効果、第2高調波発生といった種々の効果を予測した。これらを実験で観測することにより、本研究の結論を実証できる。励起子凝縮が起こっている物質は40年以上も探索されているが1つもまだ確認されておらず、本物質で励起子凝縮が確認されれば最初の例となり意義も大きい。 またマンガン酸化物における巨大磁気抵抗効果について、これを多重臨界現象が引き起こす大きなゆらぎによるものとして、実験の解析を行った。具体的には、温度やバンド幅を変えた時の磁化曲線を縦軸、横軸のとり方を変えてプロットしなおすと、温度やバンド幅によらずある普遍的な曲線に乗るという予測が立つ。それを実験データについて実行した結果、この理論がよく成立することがわかった。この結果はゆらぎを無視した平均場理論では説明できず、強磁性と電荷・軌道秩序との間の競合に由来するゆらぎが大きいことを意味する。
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