今年度は、希土類サイトを変化させた一連のペロブスカイト型チタン酸化物をフローティングゾーン法で作製し、共鳴X線散乱の研究者と共同でその軌道状態を調べた。その結果、希土類イオンのイオン半径を大きくするとき、低温での磁気秩序が強磁性からG型反強磁性に変わるにもかかわらず、軌道状態に変化はないということが示唆された。また、以前の測定結果では、希土類イオンがLaのとき、共鳴X線の超格子ピークは観測されていなかったが、今回、それを観測することができ、現在解析中である。 さらに、強磁性絶縁体のYTiO_3にCaをドープした試料を作製し、このときの軌道秩序の崩壊の様子を調べた。まず、Caを16%程度ドープすることによって、磁化率のワイス温度は正から負へ転じることがわかった。そこで、このCa濃度付近において、軌道秩序の消失が起こっているものと予想し、比熱測定によって軌道自由度のエントロピーの開放に伴う異常を見つけることを試みた。しかしながら、比熱のデータおよび、それから解析によって求めた電子系のエントロピーに、そのような異常は認められず、磁化の結果と統一的な解釈は得られていない。現在、ラマン散乱によって、格子の異常がないかどうかの測定を行っている。
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