非フェルミ流体的振舞いを示すアクチナイド系物質として知られるウラン化合物のうち、いくつかのものは新しいタイプの超伝導現象を示す。特に、昨年から話題になっている強磁性相中の超伝導の発見は、本研究目的である5f電子の『遍歴・極在』の二重性を明らかにすることと重要な関連がある。研究実施計画で直接対象とするのは非フェルミ流体であったが、その対象を異方的超伝導まで拡張して本研究を行い、以下に示すような知見を得た。 1.非フェルミ流体も新しいタイプの超伝導も軌道の自由度が重要であり、これがウランなどのf電子系の重要な特徴である。 2.ウラン系化合物の近藤効果による非フェルミ流体はウラン原子の複雑な原子構造が重要であるが、本研究で調べた超伝導中の近藤効果はそれだけでなく、クーパー対のもつ内部自由度にも強く依存する。 3.磁気秩序と超伝導の共存について、軌道自由度の重要性を示唆する結果を得た。 以上の研究は、非フェルミ流体を調べるのに用いてきた従来のモデルを拡張したモデルに基づいたものであり、実施計画どおりに研究を進めることができた。また、帯磁率の計算も実施し、この系を特徴づける普遍的な振舞い(たとえば、スケーリング)を見つけた。これらの成果はリストに挙げてある2編の論文として発表された。
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