本研究はPrBa_2Cu_3O_7の有する、キャリア注入され、本質的には金属的と考えられるCuO一次元鎖の電荷応答を光反射率分光により調べ、量子細線などを応用したメゾスコピック素子の物理的基礎をも与えると期待される「朝永-ラッティンジャー液体」状態の実験的検証を行うことを目的としている。初年度である平成13年度は、主として反射分光光学系の整備と双晶欠陥を除去した高品位の完全結晶育成・評価を行い、以下の成果をおさめた。 (1)現有のフーリエ分光器および回折格子分光器に対して、最高500Kまでの高温度域でも精密な反射分光測定ができるよう光学系を改良した。また、この光学系を用いて、関連物質の反射分光実験を行い、成果を発表した。 (2)PrBa_2Cu_3O_7およびYba_2Cu_3O_<7-y>単結晶の高品位化につとめた。とりわけ、1mm程度の大きさを持つ、双晶欠陥の除去された完全結晶の育成に成功した。そのうちPrBa_2Cu_3O_7については、十分な酸素アニール等の処理により酸素欠損を低減し、従来のものに比べてより金属的なCuO一次元鎖の実現に成功した。これらの結晶について、現在反射分光実験を行っている。 (3)CuO一次元二重鎖を有するPrBa_2Cu_4O_8のCuサイトをZnで置換した試料について反射分光実験を行い、Zn置換によって生じる、CuO_2面およびCuO二重鎖の電子状態における変化を議論した。また、この成果をまとめた論文をPhysica Cに投稿した。
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