研究概要 |
平成13年度には主に、電子ドープ型高温超伝導体であるPr_<2-X>LaCe_aCuO_4の大型単結晶試料を育成し、磁気-超伝導相図を磁化測定、μSR測定により決定した。また、超伝導転移を示すx=0.12について、中性子散乱実験を行い磁気励起スペクトルの観測を行った。 得られた相図から静的磁気秩序相と超伝導相が互いに接していることがわかり、両者が競争関係にあることが明らかになった。また、超伝導相は電子ドーピングにより一次相転移的に現れることも、単結晶を使い最適熱還元処理条件を系統的に調べた研究から明らかになった。相補的に研究を行っている電子ドープ型超伝導体Nd_<2-X>Ce_aCuO_4やSr_<2-X>La_aCuO_2でも同様の相図が得られる事から、この競合関係は電子ドープ系に共通する性質である可能性が高い。 中性子散乱実験では、高エネルギー領域(〜40meV)に及ぶ磁気散乱強度を電子ドープ型超伝導体で始めて観測した。磁気励起スペクトルは(π,π)位置に格子非整合であり、励起エネルギーが増すに連れ急速に強度、ピーク幅ともぼやけて行く。 これら結果は、ホールドープ系で知られている磁気秩序状態とアンダードープ超伝導領域の共存、格子非整合な磁気相関の存在という特徴とは定性的に異なっており、高温超伝導発現機構の電子・ホール対称性を知る上でも、ドープされたキャリアーの振る舞い(相分離など)を知る上でも重要な実験結果である。
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