| 研究概要 |
充填スクッテルダイト型構造を持つ希土類化合物RT_4X_<12>(R=希土類、T=Fe, Ru, Os、X=P, As, Sb)で見られる種々の異常物性について、純良単結晶を用い研究を行いました。それらを整理すると以下のようになります。
1.PrFe_4P_<12>の異常な秩序状態と重い電子状態。
2.CeRu_4Sb_<12>の重い電子系半金属。
3.RRu_4P_<12>、ROs_4Sb_<12>(R=La, Ce, Pr, Nd)の純良単結晶育成と物性。
特に、最も興味が持たれている1について本研究で明らかになったことは以下の通りです。
(1)中性子散乱実験の結果から6.5K以下の低温で、反強磁性と考えられていた磁気秩序状態が観測されなかった。つまり6.5K以下の秩序状態は非磁性である。
(2)一方、X線散乱実験の結果から、6.5K以下でFeの位置が僅かに動き、Feの作る副格子が立方から正方に歪み、結晶構造は体心立方から単純立方に変化していることが明らかとなった。
(3)超音波実験から、6.5Kの相転移付近で大きな弾性定数の減少が観測された。
Pr^<3+>イオンの結晶場基底状態が非磁性のΓ_3(二重項)である場合には、四重極子が存在するので、低温で四重極子秩序が起きることが考えられますが、四重極子は格子と強く結合するので、(2)(3)の実験結果は6.5Kの転移が四重極子秩序であることを示唆しています。本研究では、PrFe_4P_<12>は四重極子が伝導電子によってスクリーンされることにより引き起こされる重い電子状態の形成、つまり四重極近藤効果と、四極子秩序が共存した初めての物質である可能性を示しました。
2、3に関してはドハース・ファン効果が測定可能な純良単結晶の育成に初めて成功し、その物性が明らかとなりつつあります。
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