研究代表者は、Bi_2Sr_2CaCu_2O__<8+δ>(Bi2212)のトンネル分光研究を精力的に行い、非常に興味深い従来超伝導材料では予期できなかった結果を見いだしてきている。しかしながら、それらの見いだされた異常が銅酸化物高温超伝導材料にgenericな特徴であるかどうかが、残された課題の一つであった。そこで本年度はBi_2Sr_<2-x>La_xCuO_<6+δ>(Bi2201)の単結晶育成から、そのトンネル分光研究をBi2212と共に行い、幾つかの興味深い結果を見いだすことができた。まず、第一には、Bi2212のトンネル分光研究を通して見いだされた、異常な超伝導ギャップのdoping依存性が、Bi2201においても観測されたこと、また適当な条件下でよりよい表面状態を実現することにより、超伝導ギャップの外側に、Bi2212で観測されたものと同様なdip/hump構造の観測に成功し、これらが銅酸化物高温超伝導体に共通の特徴であることを見いだした。ここで見いだされた超伝導ギャップのdoping依存性は、低エネルギー擬ギャップ構造が、ある種の超伝導の前駆現象であることを示唆するものであり、この結果はPhysica Cにまとめられた。また、Bi2212のトンネル分光研究をさらに進め、その結果、この観測されたdip構造は、密接に中性子研究で観測されたresonance spinと関連していることが分かり、Phys. Rev. Lett.にまとめられた。尚、ここで見いだされた成果は、カナダで開かれた国際ワークショップで招待講演として研究成果発表が行われた。
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