研究概要 |
研究代表者はBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>(Bi2212)のトンネル分光研究を精力的に行い、重要な結果を見いだしてきている。そこで本年度は擬ギャップ・ストライプと超伝導の関係を調べるためにさらに研究材料をBi_2Sr_<2-x>La_xCuO_<6+δ>(Bi2201)、(Cu,C)Ba_2Ca_3Cu_4O_<12+δ>(Cu1234),TlBa_2Ca_2Cu_3aO_<10-y>(Tl1223)まで広げた。まずは擬ギャップと超伝導の関係に関しては、Bi2201の超伝導ギャップのdoping依存性を詳細に調べ、Bi2212と同様の低エネルギー擬ギャップ温度T*にスケールするdoping依存性を表すことを明らかにし、さらにCu1234及びTl1223に関してはas-synthesisの多結晶体を用いてトンネル分光測定を行い、さらにその温度依存性より、超伝導ギャップがT_cでスムーズに低エネルギー擬ギャップ(LPG)に移り変わり、LPGが、NMRの研究で観測されたT*で消えることを明らかにした。かなり過剰にドープされたBi2212のトンネル伝導度の温度依存性からは、T*はキャリアーが過剰にドープされた状態では、T_cにマージするために、T_c以上ではLPG構造を表すフェルミレベル近傍の状態のくぼみが観測されないことを見いだした。これらの結果は全て、LPG構造がある種の超伝導の前駆現象であることを示唆するものであり、サンディエゴで開かれた国際会議(new3sc-4)にて基調講演を依頼され講演を行った。また、ストライプと超伝導の関係については、La-doped Bi2201の単結晶を作り、1/8近傍でのT_cの落ち込みが観測できるか調べたが、今までのところ他の系で見られたような1/8異常は観測されず、ストライプ構造がhigh-T_cに本質的なものであるかどうかに疑いのある結果が得られている。
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