平成13年度において本研究代表者は、高分子コロイド系におけるナノ構造形成に関する研究を行い、以下のような成果を挙げた。 (1)強相関ソフトマテリアル系における対イオン凝集現象: 本研究においては、溶液中のソフトマテリアルにおけるクーロン遮蔽効果について明らかにするため、荷電コロイド粒子系におけるモンテカルロ・シミュレーション解析を行った。その結果、クーロン強結合系においては、コロイド粒子表面に対イオンが集中する"対イオン凝集現象"が起こっていることが確認された。 (2)強相関ソフトマテリアル系における電荷反転現象: 電荷を帯びた物体表面における遮蔽電荷密度のプロファイルは、表面からの距離に関しては単調ではなく、振動しながら減衰している事が明らかとなった。またこのような遮蔽効果は、電荷の大きさのみならず、溶液中のイオン半径に強く依存することを見いだした。この結果は、従来幅広く用いられているPoisson-Boltzmann理論に基づく連続体解析が、クーロン強結合系においては良い近似ではなく、分子論的描像に基づく理論的取り扱いが不可欠であることを示唆している。 (3)荷電コロイド系における有効相互作用: 近年、溶液中の荷電コロイド系における相互作用の性質に関して、様々な観点から関心が持たれている。本研究では計算機シミュレーションにより、溶液中における荷電コロイド粒子系、及びその電気二重層の振る舞いに関して数値的に明らかにした。
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