以下の各項目に関する研究を行った。 物質の内部を進行する亀裂の先端は一次元的な広がりを持つことから、一種の線状構造とみなせるが、その動力学的な振舞に関しては不明な部分が多い。今回、湿潤粉体の乾燥の実験において、非一様な体積変化に伴う応力集中によって生じる亀裂には二種類あること、それらは形態および生成メカニズムが異なること、特に、一方のタイプでは含水量の動的な測定によって含水量の分布と亀裂のパターンに相関があることを実験的に確認し、亀裂の排水路としての役割について論じた。 二枚のガラス板の間の狭い領域に閉じ込められた液体の乾燥過程を考える。乾燥によって進行する気液界面は厚さ依存性を無視すれば二次元系における一次元界面であり、その運動はよく研究されている。そこで、今回は界面の運動に対する不純物の影響をみるために、液体に粉体を混入した。混入時に粉体の密度分布が一様であっても、乾燥過程とともに粉体が凝集をおこし、混入する粉体の量に応じて島状または迷路状のパターンが形成されることを明らかにした.この凝集現泉は、(気液)界面によって引き起こされると言う点でこれまで報告されているタイプのバルクな凝集現象とは異なる。このパターンが形成される基本的なメカニズムは、気液界面の進行と粉体の輸送という過程が互いに影響を及ぼしあった結果だとと思われる。なお、乾燥過程が方向性をもっているにも関わらず、最終的に観測されるパターンが等方的であることはきわめて興味深い。 外力によって駆動される線状構造が弾性的性質をもつ場合、その挙動がシステムサイズおよび境界条件に強く依存することをモデルの構築、自明解の安定性解析、分岐理論等によって理論的に示し、数値計算によって確認した。
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