Bose-Einstein凝縮体の原子個数や生成装置の安定度が量子渦やトンネリングの観測に十分でなかったため、始めに二重磁気光学トラップおよび蒸発冷却の改善を行った。その結果、磁気トラップの原子個数を従来の2〜3倍に増やすとともに、トラップ寿命を約3倍に延ばすことに成功し、効率的な凝縮体生成が可能となった。 そこで次に、凝縮体を光トラップするための半導体レーザー光学系を製作した。この光トラップレーザーは、焦点位置に空間的不安定があると凝縮体の過熱を引き起こすことや、横モードの乱れがポテンシャルの乱れとなって凝縮体に大きく影響することが予想される。そこで磁気トラップを例に、トラップの空間的振動による原子温度変化などについて測定を行ったところ、予想された過熱の効果だけでなく、ポテンシャルの非調和性から振動周波数によっては冷却の効果も起こるという新たな知見を得た。 この効果は光トラップでも同様と考えられ応用も期待されるが、凝縮体の光トラップにはビームの除振やモード成形が重要であることが明かとなったので、光ファイバーによるモード成形を行った。しかしながら、現有の半導体レーザでは素子固有のモードの乱れが大きく、成形後、トラップに利用可能なパワーが数mW程度と大きく減少してしまうことが判明した。このレーザパワーではトラップ力が重力に拮抗する程度と見積もられ、原子の捕捉には不十分で、光トラップを実現するにはさらに高出力の半導体レーザーや横モードの良い連続発振ガスレーザーなどを用いる必要があることがわかった。 また、凝縮体を非破壊的に観測するための位相コントラスト法については、光トラップ中の高密度極低温Yb原子を用いて予備実験を行い、未だS/N比が悪いながらも原子分布を画像として観測することにも成功した。
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