密度の異なった2種の流体の境界を衝撃波が通過すると、初期に凹凸のあった境界面は擾乱を受け、やがてマッシュルーム状に巻き上がる。この現象はリヒトマイヤー・メシュコフ不安定性として知られ、高速流体やプラズマ物理の分野で近年多くの研究者の興味を引いている。その理由の一つに、リヒトマイヤー・メシュコフ不安定性はレイリー・テイラー不安定性やケルビン・ヘルムホルツ不安定性と違って、指数的な成長を示さない、ということが挙けられる。本研究では、このリヒトマイヤー・メシュコフ不安定について、非線形解析を行ってその成長の様子や境界における渦度の分布等を詳しく調べている。 従来、リヒトマイヤー・メシュコフ不安定性を引き起こす為には、衝撃波の存在が不可欠であると考えられてきたが、ここでは、衝撃波は必ずしも必要ではなく、初期に非一様な渦度分布が境界上にありさえすれば、この不安定性が生じることが示された。このことに関して、衝撃波が存在するとき、初期に非一様な渦度が存在するときの2つの場合におけるシミュレーション結果と理論解析の結果が比較検討され、以上3つの場合に安定的な差異は認められないことが示された。理論解析は初期における非一様な渦度分布の存在を仮定して計算されているので、以上の結果からもリヒトマイヤー・メシュコフ不安定性は衝撃波を必要としないことが確かめられる。境界の成長率とアトウッド数及び初期振幅依存性が議論され、アトウッド数が大きいほど、また初期振幅が大きいほど、成長速度が大きくなることが示された。さらに、あるアトウッド数以上では、解が発散することも示された。
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