大規模な自然現象のうちの一つである、広域的な火災から発生する火災旋風を定性的に調べるため、回転を起こす原因となるコリオリ力を考慮した下で、高温度差をもつ熱対流の3次元数値計算を行った。火災旋風への影響が無視できないと思われる大気の密度成層を考慮するため、温度差の大きい熱対流を密度成層の下で解くための方程式の定式化を行い、数値的に解いた。とくに、密度成層を考慮した場合と考慮しない場合について比較計算を行い、火災旋風に対して密度成層がどのように影響するのかを調べた。これにより、密度成層の影響で、熱対流がある高さより上空へ上昇することを妨げられ、その結果熱対流は水平方向に向きを変えて広がっていく、というような成層中における熱対流の流れのメカニズムが明らかになった。これは、空に天井が存在するかのように、地上からは旋風は上空で広がって見えるということの説明を与えるものであると考えられる。また、旋風の上空において、下からの上昇流の影響で初速度を得た上空の空気塊が振動を始めるという、成層流特有の現象の一つである内部重力波も捉えられた。これについては、数値シミュレーションでなければ捉えることが非常に困難であり、計算条件などの影響についてなど総合的な考察が必要であるが、本研究において内部重力波の旋風の上空での発生の可能性が示された。これらの成果は、計算結果の適切な可視化によって得られたものが多く、その実績は可視化に関する会議等においても評価を受けている。
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