研究概要 |
2000年10月6日に発生した鳥取県西部地震の震源断層において余震観測を行い,そのデータをもとにS波スプリッティングの解析を行なった.その結果,以下の事柄が明らかになった: (1)震源断層中央部のの直上では早いS波の振動方向が断層の走向に平行である.これは,本震時に形成された剪断クラックを反映していると考えられる. (2)震源断層南端では,早いS波の振動方向が,広域応力場(最大水平圧縮応力方向)に一致している.このことから,本震時の主たる破壊は,震源断層南端まで及んでいなかったことが示唆される. (3)震源断層中央部で発生した地震のうち,本震時のすべり量が大きかった(4m以上)領域の一部をパスが通過してきたもののみ,断層と平行な早いS波の振動方向を示す.これは,本震時に破壊したアスペリティと剪断クラックの分布している領域が良い一致を示していることを意味している. 本年度の研究成果から,震源断層の走向方向の広がりをS波スプリッティングでおさえることができた.また,「震源断層直上でのS波スプリティング解析はアスペリティの検出に有効である」との新しい知見が得られた. ただし,本年度の観測・解析では,震源断層上の観測点分布が粗であったため,アスペリティ領域の一部しか検出できなかった.そこで,推定されているアスペリティ領域直上に臨時観測点を密に配して,アスペリティの全体像を捉えることとが今後の課題である.また,アスペリティ領域とその他の領域での異方性の度合いの比較を定量的に行うことも重要な課題である.
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