研究概要 |
本年度は地球内部における水の影響に関する研究として、以下の5編を投稿した。1つは660km地震波速度不連続面の原因と考えられているオリビンのポストスピネル高圧相転移における水の効果に関する研究で、水の効果によりこの相転移境界は高圧側に移動することが明らかとなった。この現象はそれぞれの鉱物の含水量を測定することにより、この相転移の低圧相ringwooditeには2.8wt%もの水を含むが、高圧相のperovskiteには0.05wt%程度しか水を含まないことから説明できることが明瞭に示された(Higo et al.,2001)。更に、マントル中、特にマントル遷移膚の1200℃以下の比較的低温部で存在可能な含水相、superhydrous phase Bを合成し、このラマンスペクトルを高温高圧条件下で測定した(Liu et al,2002)。またマントル遷移層の高温部でも広く存在すると考えられている含水相hydrousγを合成し、このラマンスペクトルを高温高圧条件下で測定した(Liu et al, in press)。 上記の研究以外に、比較的単純なMgSiO_3-H_2O系、及びMgCaSi_2O_6-H_2O系で高圧溶融実験を行い、含水系での鉱物の融解現象を解明した。また、CO_2の影響の研究として、オリビンの高圧相転移におけるCO_2の影響についても研究した。この結果、410km、及び520km地震波速度不連続面の原因と考えられているオリビンのα-β転移、β-γ転移とも高圧側に移動することが明らかとなった。この現象は各鉱物間のCO_2の分配に関係していると考えられる。さらに放射光その場観察実験に携わり、前述のマントル遷移層の低温条件下で安定であるsuperhdrous phase Bの高温安定限界を精密に決定するとともに、この相の熱弾性的性質も明らかにした。以上の研究については、現在論文執筆中であり、近々投稿予定である。
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