本年度の研究実施計画にしたがって以下のような成果が得られた。 1.地表面フラックス検証データの観測 水田サイト(東北大学大気境界層観測所、宮城県小牛田町)および果樹園サイト(東北大学東根気象観測点、山形県東根市)において、それぞれ地表面熱収支観測(乱流および放射フラックス)を行った。その結果、研究対象とする作付期間または展葉期間において、時々欠測が生じたものの、本研究の遂行には十分な量のフラックスデータを取得することができた。また、フラックスの時系列とともに、地表面粗度の時間変化(季節変化)、およびその風向依存性を検出することができた。 2.数値モデルの開発-地表面熱収支2層モデル(植生、土壌+湛水) Kondo and Watanabe(1992)の植生・土壌2層モデルをMatsushima and Kondo(1995) の線形熱収支モデルに組み込み、線形熱収支2層モデルを構築した。このモデルでは、新たに土壌上に浅い湛水の熱容量や温度変化を評価できるモデルを組み込んだ。このモデルは、水稲群落および果樹園に適用できるように設計されており、テストランでは陸面過程パラメータを与えた場合と衛星データを与えた場合でいずれも良好な結果を示した。本モデルの計算には地上気象のグリッド値を与える必要があるが、各種地上気象データおよび海面温度データよりグリッド値を導出するモデルを開発した。各グリッドが必要とするデータの分布範囲は平均して半径15km以内で十分であった。
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