本研究では、SF_6濃度の分析システムを確立し、大気中SF_6濃度の空間的、時間的変動を地球規模で明らかにした。以下にその結果をまとめる。 (1)航空機観測によって得られた日本上空、シベリア上空、南極上空のSF_6濃度はいずれも経年的に増加していることが明らかになった。2001年6月から12月までの期間について北半球と南半球の対流圏を比較すると、高度0kmから6kmまでの領域で平均したSF_6濃度は、日本上空で5.01pptv、シベリア上空で4.98pptv、南極上空で4.75pptvであり、濃度に明確な南北差があることがわかった。これは、SF_6の放出源が主に北半球の中高緯度の地表に位置しており、この影響が対流圏全体に伝わっているためである。 (2)大気球による成層圏のSF_6濃度の観測から、三陸上空の成層圏下部では高度とともにSF_6濃度が低下し、高度25km以上で濃度がほぼ一定になることが明らかになった。これは、成層圏において熱帯域から極に向かって大気が輸送される際に、その速度は高度が低いほど速くなっているからである。成層圏におけるSF_6濃度は、どの高度帯をとっても年代が増すにつれて直線的に増加していることがわかった。このようなSF_6濃度の鉛直分布から対流圏起源の空気が成層圏に入ってからの経過時間(SF_6-age)を推定した結果、高度15km付近のSF_6-ageはおよそ0年から3年、高度35km付近のSF_6-ageはおよそ6年から8年であった。 (3)太平洋上における船舶観測から、SF_6濃度は北半球の中緯度で濃度が高く、南下するに従って低下し、南半球では中緯度までほぼ一定の値を示していることが明らかになった。
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