研究概要 |
本年度はまず、大気大循環モデル(GCM)の相互比較研究の基礎となる、観測データの解析を行なった。具体的には、集中観測TOGA COAREにおける気象ドップラーレーダーのデータを用い、赤道域での降水の変動成分、特にスペクトルの研究を行なった。その結果、GCM評価に必要なデータを得ると同時に、人工衛星の赤外データを用いた従来に問題があることを示した(Horinouchi [2002],印刷中)。本研究では、積雲活動の時間空間変動成分の大きさが一つの鍵となるが、従来法はそれを過大評価するため、正しく評価が行なえない。 次いで、各国の代表的なGCMにおける、赤道域の積雲対流活動と大気波動の相互比較を行った。この比較研究では、大量のデータを処理し、グリッド配置や出力形式の異なるモデル間の比較を行う必要がある。これを効率良く行なうためのデータ解析ソフトウェアを、研究補助者に開発させた。その上で、現在鋭意解析を進めている。その結果、モデル間の大気波動の違いは、モデル中の積雲パラメタリゼーションに大きく依存することがわかった。波動が運ぶ運動量は、モデル間で最大2桁程度異なる。赤道域下部成層圏には準2年周期振動(QBO)という現象があるが、これまで多くのGCMがQBOを再現出来ないことが問題視されてきた。しかし、モデル中の積雲活動と観測データを比較した結果、積雲パラメタリゼーションを付加せずにQBOを再現するのは、むしろ非現実的であるということがわかった。現在投稿論文を準備中である。
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