準2年周期振動(QBO)は赤道域下部成層圏の東西風や温度、その他の物理量が約2年周期で変動する現象として良く知られている。中緯度域においても温度変動に顕著に現われるQBOが存在することが知られているが、現象の記述そのものが今だ不十分であり完全な理解に至っていないのが現状である。そこで本研究では、過去40年にわたる高層観測データを用いることにより、中緯度域におけるQBOの時間・空間構造をこれまでより精密に記述することを第1の目的とする。 昨年度に行った初期的な作業より、過去約30年にわたる中緯度域における準2年周期振動(QBO)を抽出した。その結果、1970年代および80年代においては下方伝播するモードが卓越せずに直立モードが比較的明瞭であることがわかった。本年度はこの原因について考察した。1990年代の下方伝播モードの卓越は、1991年のピナツボ火山噴火による成層圏エアロゾルの増加に起因している可能性が高い。赤道赤道QBOの明瞭な下方伝播特性が、QBOに伴う子午面循環の反対側ブランチである中緯度域にも顕著に現れたのではないかと考えられる。今後はその具体的なメカニズムを調べる必要がある。
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