今後、宇宙を対象とした研究では粒子の加速機構に関する研究が飛躍的に進むと期待される。字宙空間物理学・地球磁気圏物理学のみならず、水星や木星等の太陽系惑星近傍や太陽コロナでの粒子加速に加え、コンパクト天体や銀河天体等を対象とした高エネルギー天文学の分野でも粒子加速が主要な研究対象とされつつある。我々は、宇宙を構成するプラズマの「加速器」として、人工衛星による直接探査が可能な唯一のものである惑星間空間衝撃波や惑星磁気圏での高エネルギー粒子観測器を日本独自の技術で実現すべく、広い視野角範囲を持ち、エネルギー分析用のSSD(半導体検出器)、極薄膜カーボンフォイル、それに位置検出機能を有するMCPを用いた質量分析用の飛翔時間計測(TOF)ユニットの計算機による数値的設計を行い、飛翔体搭載用として小型・軽量化を具体的に設計・製作する為の基礎研究を行った。これらには、将来の地球・惑星探査衛星計画に搭載提案する事を前提に、例えば、水星軌道上の観測で余儀なくされる厳しい太陽輻射・温度環境への対処、メインテナンスフリーで5年間程度は著しい性能劣化を引き起こさないカーボンフォイル・検出器の選定・試験、等が含まれる。 また、本研究の来年度の計画として、機能確認用の試験モデルを構築し、現有の真空チャンバーで様々な基礎特性取得実験を行う事を考えているが、これらへの準備として、検出器信号・高圧電源の入出力ポートの設計を行い、機器制御・データ取得系を整備した。具体的には、TOF系信号の処理回路の整備として、真空内に設置するチャージアンプとSSDとのインターフェース整合試験とその後段でのメインアンプ系の選定を行い、チャンバー内に設置されるディジタル制御されたターンテーブルの整備、高圧電源の遠隔操作化、等である。更に、10keV以下の低エネルギーの粒子検出を視野に入れ、同じエネルギーを持つ1入射粒子当たりの電荷信号を増幅させるアバランチ機構付き半導体検出器の評価を行った。
|