研究概要 |
日高地域において7月中旬より9月下旬までの約2ヵ月半,臨時地震観測を実施した.観測点は北海道様似町の林道沿いに約3〜5km間隔で5点,広尾町側に一点設置し,連続記録が可能なレコーダで波形を収録した.メンテナンスとデータの収集のために3週間に一回現地に赴いた.ただし,様似町側の観測点ではクマによるレコーダ等の損傷が発生したので,一部の観測点の観測期間は1カ月程度である.これと同時並行的に前年に同地点で前年度に行われた観測データから地震の波形データを切り出し,レシーバ関数解析に用いた.解析できた波形は5つのイベントの13個の波形である.求められたレシーバ関数には地下浅部と地殻中部,深さ30km付近,50km付近からの変換波と思われる波形が認識された.これは,同地域で得られた反射法地震探査の結果と比較すると,それぞれ日高衝突帯の西側深部に存在すると考えられるデタッチメント断層付近からの反射,および東北日本弧側下部地殻内の反射面群,沈み込むプレート上面の反射面群にほぼ対応することがわかった.このように別の地球物理学的データとつき合わせを行うことによってより客観的に各変換面の成因を推定できる可能性が示された.特に深いほうの変換面の連続性は反射の記録からのみでは十分把握できていないので,今後解析データを増やすことによって新しい情報がえられると期待される.一方,減衰構造の推定は日高地域で行われた全国の大学による合同観測のデータを使用することとし,データ解析のための許可申請を行っている.それと平行して約50個の地震の読み取りや震源解の決定などをインバージョンの準備として行った.減衰のインバージョン結果については解析許可後に学会で公表する予定である.
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