研究概要 |
本年度は,飛騨外縁帯に分布するデボン系の詳細なルートマップ・柱状図(1/100スケール)の作成と含床板サンゴ化石岩石試料採取,ならびに,同位体年代測定による飛騨外縁帯時代未詳層の形成年代の決定に力点を置いた.含床板サンゴ化石岩石については,岐阜県上宝村福地の一ノ谷沿いに露出するデボン系福地層より,約300試料(重量421kg,サンゴ個体数にして1500個体以上)を採取し,現在,薄片製作,鑑定,分類作業を鋭意実施中である.また今年度は,イギリスのロンドン自然史博物館へ10日間出張し,世界各地の床板サンゴ化石の比較を行った. 同位体年代測定については,岐阜県上宝村今見に分布する,今見緑色岩類の原岩・変成年代を決定するため,今見緑色岩類に含まれる斑れい岩より普通角閃石を重液分離法にて高濃度で分離し,現在,Ar-Ar法を用いて分析作業を実施中である.分析結果は,来年度早々に得られる予定である. またその他,野外地質調査により,美濃帯北縁部に分布する剪断帯の変形解析も行った.その結果この剪断帯は主にカタクレーサイトから構成され,幅数100mにわたる,かなり大規模なものであることが判明した.変形岩中の変形構造は,この剪断帯を形成した変動が左横ずれ成分を持つことを示す.また,この剪断運動は他層との被覆関係や火成岩との貫入関係などより,白亜紀に起こった可能性が高い.このことは,美濃帯北縁部の剪断変形が,飛騨外縁帯形成に関する変動(束田,1999など)と密接に関連していることを強く示唆する.
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