セラタイト目アンモナイトは、ペルム紀前期から三畳紀末までに栄えた一群で、中生代アンモナイトの根幹をなす。その起源については、縫合線の形態やその個体発生様式、殻形態に基づいて様々な推論がなされているが、未だ明確な学説は提唱されていない。 アンモナイトの殻体の内部には、隔壁や連室細管など多くの形質が存在する。そのうち、特に成長初期の諸形質はアンモナイトの高次の系統分類に極めて有効な基準となることが経験的に知られている。そこで、石炭紀とペルム紀のプロレカニテス目、ゴニアタイト目、セラタイト目のアンモナイト40種の初期殻体内部構造を観察し、セラタイト目の起源に関する推定を試みた。なお、観察は、走査型電子顕微鏡を用いて、初期殻の大きさ、盲管の形態、原連室細管の形態、連室細管の個体発生様式、原隔壁の形態、隔壁襟の形態、第一くびれの位置、第一くびれまでの殻の大きさなどを中心に行った。 観察の結果、プロレカニテス目とゴニアタイト目の初期殻体内部構造は、盲管の形態、原隔壁の形態、連室細管の位置の違いにより、7タイプに識別できることがわかった。また、最初のセラタイト目であるParaceltites elegansはこれら7タイプのうちプロレカニテス目のDaraelitesと同じ初期殻体内部構造をもつことがわかった。この事実は、セラタイト目がプロレカニテス目のDaraelitesから派生した可能性が高いことを強く示唆する。したがって、セラタイト目はペルム紀に大繁栄していたゴニアタイト目ではなく、より原始的な一群であるプロレカニテス目から派生したといえる。 なお、この研究成果はPaleontological Research誌5巻3号(2001年)の201頁〜213頁に英文で公表した。
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