研究概要 |
今年度の調査により、石川県白峰村桑島化石壁(手取層群桑島層)から7種類の巻貝類化石を確認した。 Viviparus onogoensis Kobayashi and Suzuki,1937(タニシ類) Micromelania? katoensis Suzuki,1943(カワニナ類) Physidae gen. et sp. indet., species A(サカマキガイ類) Physidae gen. et sp. indet., species B(サカマキガイ類) Planorbidae gen. et sp. indet.,(ヒラマキガイ類) Pupilloidea fam. gen. et sp. indet.(サナギガイ類) 所属不明1種 7種類中、タニシ類とカワニナ類をのぞく5種類は、未記載種である。サナギガイ類は、いままでの化石記録がレバノンから記載された130〜120Maとされる地層のものが最古であったので、140Maとされる桑島化石壁からの産出は最古の化石記録の一つとなる。また、各種の産出量は、サカマキガイ類が圧倒的に多く、全体の90%を占める。 タニシ類をのぞく6種はすべて大きさ1cm未満の微小種である。タニシ類が湖底堆積物である泥質細粒砂岩から産出するのに対し、微小巻貝類は湿地成の堆積物であるシルト質泥岩より産出し、両者は共産しない。このことは、両者の生息環境の違いが、化石群の形成過程において保存されたものであろう。 このような堆積環境と軟体動物化石群の構成の組み合せは、現在の淡水環境で観察されるそれぞれのグループの生息環境に調和しており、白亜紀初期の淡水環境には、すでに現在と良く似た軟体動物相が存在していたことが伺える。
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