研究概要 |
化石エネルギー資源が枯渇への一途を辿る中,暫定的なエネルギー源としての原子力の重要性は今後益々大きくなると考えられる。しかしながら,地球環境への負荷を出来る限り抑制するためには原子炉のエネルギー転換率を高める必要が有り,これをクリアするための課題の一つがジルコニウム(Zr)とハフニウム(Hf)の完全分離である。この問題を解決するために,オパールCT含有珪質泥岩を用いた,ZrとHfを分離する新しい技術の開発を行った。 今年度はオパールCTの吸着挙動を明らかにするために,1)不純物含有量をICPの検出限界以下にまで押さえた超純水の作製,2)オパールCT含有珪質泥岩の定性分析と,それにより検出された構成元素の定量分析,3)吸着実験に使用するHfとZr標準溶液の定性及び定量分析と,それによる不純物濃度の定量,4)微量の硝酸,塩酸,フッ酸の各溶媒条件下における,オパールCTのZr-Hf混合溶液に対する吸着挙動のICPによるモニター,を行った。 実験の結果,溶媒に0.5%の塩酸又は硝酸を選択した場合,それぞれ100ppmに調整したZrとHf共にオパールCTに吸着されるが,Hfが100%吸着されるのに対して,Zrは完全には吸着されないことが確認された。また,これまで微量でもフッ酸が存在する環境下ではHfとZrの吸着が起こらないとされてきたが,Hfについてはフッ化水素存在条件下でも吸着現象が生じることが明らかになった。このことは,適正なフッ化水素濃度条件を与えることにより,両元素の完全分離が可能であることを示唆している。来年度は,この最適条件を明らかにすることを重点的な課題とする。 さらに今回の研究を進める過程において,約80℃でオパールCTから石英に転移するメカニズムを解明するきっかけを得ることが出来た。研究対象地域から産する試料の全岩化学組成分析の結果,自生石英の生成率が大きくなるに従ってLi濃度が高くなっていることから,同元素が自生石英に固溶されている可能性は極めて高い。また,本自生石英は通常の低温型石英よりも格子定数が大きく,Li以外に検出される元素はAlのみである。これらの結果から,本石英にはβ-eucryptiteが固溶されている可能性が有り,その存在を明らかにすることにより,上記問題の解決が可能となる。
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