研究概要 |
スプリング8のBL04B2ビームラインにおいて、0.5GPaから5GPa、800℃から1000℃の圧力温度範囲において、バセット型外熱式ダイアモンドアンビルセル(Bassett et al.,1993,Rev. Sci. Inst.)を用いて一連のX線回折実験を行った。実験には次の3つの物質と脱イオン水の混合物を使用した:MgSiO3結晶,Mg2siO4結晶,とMgSiO3組成のガラス。各温度、圧力条件に保ち、直径40ミクロンないし100ミクロンに絞ったX線を3分間試料に照射し、イメージングプレートに記録した。温度はクロメルアルメル熱電対を用いてモニターし制御した。熱電対はNaNO3,CsCl,とNaClの大気圧での融解温度を用いて校正した。試料内の温度勾配は数℃以内であると考えている。 高温度高圧力条件におけるH2Oフルイドと共存する結晶を同定することでH2Oフルイド中のシリケイト成分のMg/Siの比を推定した。0.5GPaないし1GPaの低圧範囲でエンスタタイトーH2O系では、エンスタタイトの他にフォルステライトが観察された。このことは、この圧力範囲ではエンスタタイトとフォルステライトと共存するH20フルイドの組成はエンスタイトよりもシリカに富んでいることを示す。また、1GPaなしい5GPaの圧力範囲では、エンスタタイトもフォルステライトも調和的にH20フルイドに溶け込んでいる。このことは、同条件ではH2OフルイドのMg/Siは1と2の間にあることを示している。本実験結果はこれまでの急冷回収実験の結果と調和的である。今後も、本実験で示したその場観察方法で地球マントル内のH2Oフルイドの化学的な性質を理解していきたい。
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