研究概要 |
本研究は鉄隕石のPb同位体比をトリプルスパイク(又はダブルスパイク)法を用いて精密に測定することにより、(1)太陽系初期のPb同位体比を求め(2)異なるグループの鉄隕石が形成されたタイムスケールを明らかにする事を目的としている。鉛の同位体分析(特にダブル・トリプルスパイク法)では実験中のブランクを無視できる程度に抑える必要がある。従って本研究ではまず実験に必要な試薬のPbブランクを最小限に抑える工夫を行った。その結果以下のブランクを達成した。6N HCl 0.35ppt,8.9N HBr 1.0ppt,13N HN03<3ppt, H2O 0.4ppt, loading blank (Silica gel+H3P04) 0.1pg。このブランクは、世界の他の研究室と比べても極めて低く、トリプルスパイク法を使ったPb同位体分析を行うための環境が本研究室に整ったと言える。次に^<204>Pb,^<206>Pb,^<207>Pbのスパイクを作成し、それらを混合することによりダブルスパイクを作成した(トリプルスパイクは現在準備中)。またこれと並行してNBS981,NBS982の2種類の標準試料を作成した。NBS982は作成したダブル・トリプルスパイクのキャリブレーションに用いるものであり、NBS981はキャリブレーション後のスパイクを用いた同位体分析が正確に行われているかを確認するために用いる。一方、隕石の化学処理では、鉄隕石専用のカラムを新たに作成し、HBr-HN03を用いた鉛抽出法のキャリブレーションを行った。現在Buenaventura (IIIB),Guadalupe Y Calvo (IIAB),Carbo (IID)の処理を同時に進めており、平成14年度6月くらいまでにはこれらのデータが得られる予定である。なお、本研究では全ての試料について段階的な酸分解(リーチング)を行い地球上での鉛の汚染を除去する。
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