平成14年度は主にXANES法を用いた微量元素の状態分析に基づく以下の研究を行った. マンガン団塊への微量元素の濃集機構 Ce、Co、Pb、Asなどはマンガン団塊へ濃集する微量元素であり、いずれもFe/Mn比とよい相関を示す.XANESによるマンガン団塊中のCe、Co、Pb、Asの価数の測定などから、マンガン団塊への微量元素の濃集機構には少なくとも2種類あることが分かった.ひとつはCeやCoのようなイオン性の強い元素の場合で、マンガン酸化物による酸化的吸着が主要因となる.この場合、CeやCoの濃集は速度論的な因子により決定されると考えられ、一般にFe/Mn比の増大に伴い減少する成長速度によって制限されると推定された.一方PbやAsなどの共有結合性の強い元素では、鉄酸化物との親和性の大きさが濃集をもたらしていると推定された.これらの結果は、XANES法による化学状態の直接測定によって初めて明確に示されたものであり、本研究の大きな成果である. ジルコン中のCe^<IV>の放射線還元 正のCe異常を示すジルコン試料にCe^<IV>が含まれることをXANES法で確認した.しかし正のCe異常を示してもCe^<IV>がみられない試料もあった.γ線照射実験からCe^<IV>は放射線により還元されることが分かった.このときの放射線量とCe^<IV>の還元量は、Ce異常が見られるもののCe^<IV>が確認されないジルコンで生じたと考えられるCeの還元量と、オーダーとしては一致した.これはCe異常のCeの還元量が、天然での放射線量を反映することを意味する.このように、Ce異常の程度とXANESから得たCe^<IV>の割合に相関がみられないのであるが、この場合、REEパターンは試料の生成時の情報を保持し、XANESの結果はその後の変化に応答していると解釈できる.これはCeの価数を測定することにより初めて手にできる情報といえる.
|