研究概要 |
本研究は血漿リポタンパク質を振動分光学的手法で調べることにより、タンパク質脂質相互作用、水和構造を解析する方法論の開発を目的とした。平成13年度は次のようなテーマに焦点を絞って研究を推進した。 (1)超低密度、低密度リポタンパク質(VLDL、 LDL)の状態解析: VLDL、LDLの構成物質について溶液中と固体フィルムの赤外測定を調べた。溶液中とフィルムを比較すると、脂質に由来するバンドは類似していたが、タンパク質由来のバンドに違いが見られた。リポタンパク質の赤外スペクトルを帰属するために、脂質のスペクトルデータをベース化した。1750-1700cm^<-1>付近のエステルCO伸縮振動領域に着目したところ、リポタンパク質中のコレステロールエステルのマーカーになるだけでなく、遊離脂肪酸のカルボキシル基も反映する可能性が高いことがわかった。これまでの研究成果の一部をChem. Phys. Lipids, in pressにて発表した。 (2)高密度リポタンパク質(HDL)亜分画のタンパク質脂質相互作用: HDL亜分画のタンパク質と脂質の構造解析を赤外分光法で調べた。その結果、タンパク質と脂質の組成、構造の違いがエステルCOバンドとアミドバンドの強度に反映されることが明らかになった。各HDL亜分画のアミドIバンドのパターンは、主成分タンパク質であるアポリポタンパク質A-1のパターンと類似していた。従って、HDL中のアポリポタンパク質A-1の二次構造は脂質との相互作用によりほとんど変わらないことがわかった。 平成14年度では低密度リポタンパク質の亜分画レベルに関して振動分光学的なキャラクタリゼーションを行う。また、さらに高脂血症モデル動物の血漿を分光学的手法を用いて解析することにより、臨床化学的に方法の新しい切り口として発展させる。
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