二次元同時計数・電子エネルギー損失分光法で探る二電子励起分子ダイナミックス

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13740326
• 研究種目: 奨励研究(A)
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 小田切 丈 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (80282820)
• キーワード: 二電子励起分子 / 電子エネルギー損失分光法 / コインシデンス / 二次元同時計数 / 位置敏感検出器 / 電子衝突 / 中性解離

研究概要

平成13年度は、計画どおり、主に実験装置の組み上げを行った。
まず、既存の電子エネルギー分析器に位置敏感検出器を組み込み、電子エネルギー損失スペクトルの測定に成功した。その後、計数系を組み上げ、電子-水素分子衝突における散乱電子と、水素分子二電子励起状態の中性解離に起因する真空紫外光子との(一次元の)同時計数測定に成功した。さらに芝浦工大・吉野益弘教授の協力による二次元マルチチャンネルアナライザを用い、上記の一次元同時計数の結果得られる時間情報を一軸、位置敏感検出器からの位置情報、つまりエネルギー情報をもう1つの軸とした、二次元同時計数測定にとりかかった。これら二つのデジタルデータと、それぞれに付随するタイミング信号、およびゲート信号の間の同期をとり、水素分子を対象に、二電子励起状態領域における二次元同時計数測定に成功することができた。今後は、同時計数値から断面積相対値を引き出し、中性解離過程でタグ付けされた電子エネルギー損失スペクトル、すなわち「コインシデンス電子エネルギー損失スペクトル」を得るべく、検出効率の補正に取り組む予定である。具体的には、電子エネルギー分析器および位置敏感検出器周辺のオプティクスの解析、位置敏感検出器自身の細部改良、位置敏感検出器からタイミング信号としてのナノ秒ピックアップパルスを取り出すためのブリーダ回路の改良、等を計画している。また、更なる実験条件の最適化も目指していきたい。これらの後、この装置を用い、本格的に水素分子を対象に、水素分子二電子励起状態のコインシデンス電子エネルギー損失スペクトル測定を行いたい。

研究成果

• [文献書誌] T.Odagiri, et al.: "Forbidden doubly excited states of molecular nitrogen dissociating into two neutral atoms in electron collisions"J. Phys. B. 34. 4889-4900 (2001)
• [文献書誌] T.Odagiri, et al.: "Dissociative doubly-excited molecules in electron collisions"Proceedings of International Symposium on electron-molecule Collisions and Swarms. 17-20 (2001)
• [文献書誌] T.Odagiri, et al.: "The second generation system for the coincident electron-energy-loss spectroscopy-an excellent tool for investigating the superexcited molecules"Proceedings of International Symposium on electron-molecule Collisions and Swarms. 149-150 (2001)
• [文献書誌] T.Odagiri, et al.: "The second generation system for the coincident electron-energy-loss studies on superexcited molecules"Proceedings of 22th International Conference on Photonic, Electronic, and Atomic collisions. 692 (2001)
• [文献書誌] M.Kato, et al.: "Doubly excited methane in the vacuum ultraviolet range"Proceedings of 22th International Conference on Photonic, Electronic, and Atomic collisions. 87 (2001)
• [文献書誌] H.Fukuzawa, et al.: "Collisional deexcitation cross sections of excited rare gas atoms in resonance"Proceedings of 15^<th> International Conference on Phenomena in ionized gases. 261-262 (2001)