平成14年度は、平成13年度に組み立てた二次元コインシデンス電子エネルギー損失スペクトル測定用装置を用い、実験条件の最適化に取り組んだ。まず、位置敏感検出器周りの加速電圧の最適化に取り組んだ。半球型静電エネルギー選別器の出射口から位置敏感検出器までの間の加速方法をいくつか試行し、より広いエネルギー範囲で位置とエネルギーの直線性が得られる方法を探した。次に、二次元同時計数のためのタイミング信号を引き出すため、位置敏感検出器高電圧供給回路をいくつか試行し、時間分解能、パルス高分布の観点から最適化を行った。その後、ガス圧や入射電子電流値などの条件の最適化を行ったのちに実験を行った。位置敏感検出器の位置による感度のバラツキ、位置とエネルギーの非直線性に起因するエネルギー分解能の位置依存性、チャンネル幅の位置依存性などを補正し、同時計数率から断面積相対値を得る手続きを確立した後、縦軸を断面積相対値としたコインシデンス電子エネルギー損失スペクトル(中性解離フラグメントからの発光と同期した電子エネルギー損失スペクトル)を、時間相関、損失エネルギーの2次元同時計数測定の結果として得ることに成功した。半球型静電エネルギー分析器の透過エネルギーを低くした高分解能条件では、酸素分子を対象に測定を行い、エネルギーによる時間スペクトルの変化をはっきりと観測することが出来たばかりでなく、時間分解コインシデンス電子エネルギー損失スペクトルの可能性を示すことが出来た。今後は、より広いエネルギー範囲を対象とするときに用いる高透過エネルギーの条件における補正方法をより精度高いものにしていく必要がある。
|