本申請者は外場ドーピングによる超伝導発現に関する理論的研究を行い、以下の五つの結果を2バンドモデルを用いて予言した。(1)スピン揺らぎを中心としたスピン密度波(SDW)からの超伝導転移、(2)有機分子性結晶などに見られる絶縁体からの超伝導転移、(3)フォノン機構(BCS理論)で予測される超伝導転移温度(40K)以上の転移温度の存在、(4)電荷密度波(CDW)からの超伝導転移、(5)スピン揺らぎとフォノンによる共同的超伝導発現、を理論的に導いた。本年度はB.Batlogg等が行ったアントラセンやC_<60>の有機分子性結晶の外場ドーピングによる超伝導転移現象への展開を行った。また、オリゴチオフェンの分子性結晶もまた外場ドーピングにより超伝導が発現すると理論的に予測した。オリゴチオフェンの分子性結晶の外場ドーピングによる超伝導は後に実験的に観測された。これらの有機分子性結晶の超伝導相の近くに絶縁相があることを理論的に予測した。これらの絶縁相もまたこの予測の後に、実験的に確認された。さらに、有機分子性結晶の超伝導における結晶構造や構成分子の構造依存性などが明らかにされ、実験結果と良く一致していることが分かった。
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