これまでの我々の研究の中で、さまざまな溶媒から再結晶して得たヘリセンジオールの包接結晶や超分子結晶の構造をX線結晶構造解析二よって明らか二してきた。取り込んだ溶媒の種類やヘリセンジオールの立体構造で超分子構造は大きく異なり、ヘリセン骨格の構造も大きく変化する。 そこで、ヘリセン分子の両端を適当な長さのブリッジで固定すると、らせんのピッチを変化させることができると予測し、研究を行った。合成したヘリセン分子のX線結晶構造解析を行ったところ、末端の芳香環の二面角が28゜から59゜まで大きく変化し、ヘリセン分子がバネのように伸び縮みできることを見出した。各種スペクトル(NMR、IR、UV、CD)の測定により、構造(らせんのピッチ)とこれらのスペクトルとの相関を明らかにすることができた。これらの結果を論文としてまとめ、The Journal of Organic Chemistryにまもなく掲載される運びとなっている。 さらに、ヘリセン分子の新しい機能の発現を目指して、銅やパラジウムなど重金属との配位の研究を行っている。配位性官能基を有する新規なヘリセン化合物を3種合成し、そのうちの一つ化合物の光学分割に成功した。このように光学的に純粋な化合物の合成法を確立することに成功したので、不斉配位子としての展開を目指す予定としている。また、その他の二つの化合物に関しては、光学分割の方法を探索するとともに、らせん分子による金属イオンヘの配位の特徴を解明していく予定である。
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