研究概要 |
ベンゼン環骨格の1,4-位に2個のゲルマニウムを導入した不安定とされるジゲルマベンゼンの合成研究を行った。すなわち、2,3,5,6-テトラフェニル-1,4-ジゲルマシクロヘキサ-2,5-ジエン(1)にTHF中、-40℃でt-ブチルリチウムを作用させたところ、1の白色固体は消失し、赤色溶液となった。そのまま反応溶液を室温まで昇温させ、トリメチルクロロシランを加えて反応混合物を捕捉したところ、瞬時に赤色は消失して無色となり、生成物は2個のゲルマニウム上にエチレンが架橋してそれぞれトリメチルシリル基が導入された1,4-ビス(トリメチルシリル)-2,3,5,6-テトラフェニル-1,4-ジゲルマビシクロ[2.2.2]オクタ-2,5-ジエン(2)が得られた。2は各種NMR、元素分析およびX線結晶構造解析により同定した。この捕捉生成物は反応系中にジゲルマベンゼンが生成していることを強く示唆するものである。また、ジゲルマベンゼンが発生していると考えられる赤色溶液にスチルベンを作用させ、引き続きトリメチルクロロシランで捕捉したところ、スチルベンが1,4-位のゲルマニウム上に付加したビシクロ[2.2.2]オクタ-2,5-ジエン類縁体も単離することができた。この研究成果は化合物が極めて嫌気性のために、当補助金により購入した高真空排気装置の活躍が無ければ成し得なかったと考えられる。
|