研究概要 |
不斉置換基を有するシリレンへのアルコール付加反応において不斉誘導が起きることを明らかにした。すなわち、不斉置換基としてフェニルエチル基を有するトリシランをt-ブチルアルコール存在下、ヘキサン中、254nmの光照射を行ったところ、シリレン捕捉生成物であるジアステレオマー混合物の二種類の異性体として観測され、しかも異性体の偏りが観測された。この時、この異性体比はケイ素上の置換基、アルコールの大きさ、あるいは反応温度に依存した。立体構造については、二種類のジアステレオマー混合物をガスクロマトグラフによりそれぞれ分離し、^1H,^<13>C及び^<29>Si NMR、HCCOSEYおよびNOE差スペクトルにより、またX線構造解析などを用いて解析した。これらの結果よりアルコールがシリレンに攻撃する際、隣接不斉炭素上の置換基の立体を区別し、最も立体障害の少ないメチル基-プロトン間からアルコール酸素が攻撃し、ケイ素上に不斉誘導が起こる事がわかった。 さらに、置換基に酸素あるいは窒素原子などシリレンの空のP軌道に対し配位可能な基を有するシリレンとアルコールとの付加反応においては、先の場合と異なりジアステレオ選択性が逆転した。これは配位型の置換基がアルコールよりも先に立体障害の少ない側からシリレンのp軌道に配位し、その後アルコールと反応して付加体を与えるものとして理解することが出来る。 これらの実験は、14属二価化学種の反応において不斉誘導を示した初めての例となった。
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