デンドリマー型ケージド化合物として、これまでのPAMAMデンドリマーをコアとした一連の化合物に加え、DABデンドリマーをコアとした1〜5世代(末端数4〜64)を合成し、その光反応性について検討した。その結果、DABをコアとした化合物は、世代が大きくなるにつれて、末端あたり、および、分子あたりの生理活性物質の放出量が増大していることが明らかとなった。PAMAMをコアとした化合物では、末端あたりの放出量は世代が大きくなるにつれ減少したことから、コアの構造の違いがデンドリマー型ケージド化合物の光反応に影響を及ぼすことが分かった。 デンドリマー型ケージド化合物を細胞実験に使用するには、緩衝液などに十分な量の化合物が溶解する必要がある。水溶性を増加させるために、デンドリマー型ケージド化合物の末端にカルボキシル基を導入することを試みた。従来の合成法をふまえ、末端にtert-ブチルエステルを有するデンドリマー型ケージド化合物を合成し、最終段階でトリフルオロ酢酸により、ポリカルボン酸へと変換した。PAMAMをコアとした化合物で合成を行っており、光照射により分解反応が進行することを確かめた。 水溶性の増大に加えて、糖のクラスター効果を利用した細胞認識能を有するシュガーボール型のケージド化合物の開発にも着手した。生理活性物質としてマクロファージにアポトーシスを誘発するロイシルロイシンメチルエステルを用いていることから、マクロファージのマンノースレセプターをターゲットとして、多数のマンノースを有する化合物の合成を目指す。これまでの、予備的な実験の結果から、合成したPAMAMをコアとする0〜2世代のシュガーボール型ケージド化合物は、糖を持たない化合物に比べ、水溶性が格段に増加することが分かった。また、光照射により生理活性物質を放出することも確認した。
|