研究概要 |
2,5ジメルカプト1,3,4チアジアゾール(DMcTH_2)は、多様な配位形式が可能な配位子であり、金属の分析、重金属の捕集、二次電池の正極剤などに用いられている。しかし、現在までに報告されたDMcT錯体は、ほとんどがポリマー性の固体化合物であり、分子レベルでの構造や反応性は明らかにされていない。本研究ではDMcTH_2を配位子として持つ分子性の錯体の合成と物性解析を目的とし、本年は、新規に、ルテニウム及び銀の錯体の合成及び構造決定、並びに白金錯体とルテニウム錯体の電気化学的挙動について研究を行った。 置換可能な配位子を一つ持つ[Pt(trpy)(OH)](PF_6)を用いることにより、単核、及び複核白金錯体[Pt(trpy)(DMcTH)](PF_6)、[Pt(trpy))_2(DMcT)](PF_6)_2が合成できる事を明らかにしているが、同様に置換可能な配位子を一つ持つルテニウム錯体[Ru(trpy)(bpy)(H_2O)](PF_6)_2を用いる事により、[Ru(trpy)(bpy)(DMcTH)](PF_6)を合成した。この錯体中で、DMcT配位子は一つのプロトンが外れたDMcTHとしてチオラト基の硫黄で単座配位していることが明らかとなった。 また、銀錯体としては、PPh_3をターミナル配位子として利用し、[Ag(DMcTH)(PPh_3)_2]を合成した。構造解析により、この錯体は、{Ag(PPh_3)_2}単位がDMcTH-によって架橋配位された無限鎖状の構造を持つことを明らかにした。銅の錯体でも同型の化合物ができることを明らかにしているが、これらの銅と銀の錯体は、ポリマー性のDMcT錯体の初めての構造決定例である。 また、[Pt(trpy)(DMcTH)](PF_6)、[Ru(trpy)(bpy)(DMcTH)](PF_6)について、電気化学的測定を行い、メルカプト基の酸化還元電位が、これらの金属錯体中では正側にシフトすることを明らかにした。
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