希土類塩化物に高温で室温の結晶構造とは異なる相が存在するかどうか確認するため、X線吸収微細構造法(XAFS)ならびに示差走査熱分析(DSC)で、室温から融点以上に亘る当該物質の物性測定を行った。試料は、一般に市販のものと、さらに研究代表者自身によって蒸留精製した、塩化ネオジムおよび塩化ジスプロシウムを用いた。DSC装置はこれまでのアルミナ製を改め、気密性がより良く保つことのできる石英製とし、排気にはターボ分子ポンプ、置換ガスには超高純度アルゴンガスを用いた。その結果、蒸留精製したものも、一般に市販のものも、液相転移とみられる単一のピークのみが検出され、これまでのKoyamaらに報告されていた、そして我々の以前のXAFS測定により示唆されていた、高温相転移の現象は今回のDSC実験によっては再現されなかった。そのため、なぜ再現性が得られなかったのか、以前得られたXAFSの結果の解析を、高温非調和振動の効果を取り入れてさらに進めるとともに、試料保持方法を以前のようなマトリックス媒体に混合させることを止め、石英セルに試料を封入する方法で、今回合成の試料を再測定するための申請をSPring-8に対し行っている。 以前得られたXAFSの成果を元に、平成14年7月にはXAFS討論会で議論し、8月には英国よりAdya教授を招いて、構造解析のワークショップを開催した。それらの議論より、XAFSにより得られた構造データもエラーバーを付け評価すべきこと、そして、回折法など他の構造解析法と組み合わせ総合的に判断すべきことなどが提案された。本成果はより方法論を詰めて、質の高いデータが得られた段階で、論文等により公表する予定である。
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