本研究では、均一な大きさのメソ孔が規則的に配列した多孔質シリカであるメソポーラスシリカを鋳型に用い、形状制御されたカーボンナノチューブなどカーボンナノマテリアルの合成を目指している。 本年度は以下のことを行なった。 ・出発試料である界面活性剤の種類をいくつか用いること、ゲル化温度および保持時間を制御することでメソ孔サイズの異なるメソポーラスシリカを種々合成した。合成したメソポーラスシリカのキャラクタリゼーションはX線回折測定、透過電子顕微鏡観察、窒素吸脱着測定など多角的に行なった。これらの実験結果から合成したメソポーラスシリカのメソ孔径は2nmから30nm程度まで広範囲をカバーしていることがわかった。 ・合成したシリカ鋳型を用いて、鋳型炭素化法により多層カーボンナノチューブの作成に成功した。炭素源にはプロピレンガスを用い、反応温度は800℃に設定した。キャリアガスとして乾燥窒素ガスを用いた。CVD処理した試料はフッ酸処理したのち透過電子顕微鏡観察を行なった。 ・鋳型炭素化法により生成するカーボンナノチューブの直径は鋳型のメソ孔径に依存することを明らかにした。また、炭化水素の熱分解がシリカ表面に酸点を導入することで大きく促進させることがわかった。酸点の導入はメソポーラスシリカを乾燥エタノール中で塩化アルミニウムと反応させることにより行なった。 ・硝酸鉄水溶液をシリカ鋳型に導入したのち熱処理により酸化鉄微粒子を鋳型のメソ孔内に埋め込んだ。この酸化鉄微粒子を触媒とするCCVD法により単層カーボンナノチューブの合成を行なった。透過電子顕微鏡観察により単層カーボンナノチューブの存在を確認した。
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