研究概要 |
本年度は2種類の新規電子供与性多座配位子とこれによる一次元鎖状多核銅(II)錯体,および銅(H)-マンガン(III)ヘテロ金属多核錯体を合成し,類似錯体との構造・電子状態に関する比較検討を行った。ジアミノレゾルシノールと2当量の4位置換サリチルアルデヒドとの反応により,三座配位サイトを2箇所に有する新規6座配位子の合成に成功した。配位子の構造はX線結晶構造により確認され,結晶中でこの配位子はフェノール酸素の水素結合により単一方向へのネットワークを形成していることがわかった。銅(II)イオンとの反応では,配位子:銅(II)=1:2の化合物が得られた。銅イオン間には強い反強磁性的相互作用が確認され,錯体は一次元鎖状のポリマー構造を形成していることが示唆された。この錯体は,非常に強い特徴的なCT吸収帯を500nm付近に示し,固体状態では2色性を示すことから機能性色素材料としての応用が期待される。また,修飾Salen型新規8座配位子の設計を行い,これを合成・単離した。この配位子と銅(II)との反応では,平面型単核銅(II)錯体が生成し,これをX線結晶構造解析により確かめた。この銅錯体は,配位可能なカテコラト配位サイトが2箇所残っているため錯体配位子とし機能できる。マンガン(II)との反応では黒紫色の微結晶が得られた。構造解析には至っていないが,マンガン(III)-銅(II)鎖状のヘテロ金属錯体の生成がESRスペクトルから示唆された。配位子内のカテコール部は酸化されやすいことが電気化学測定からわかっているため,実際のマンガンイオンへの配位はセミキノン型として結合しているものと推測された。
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