研究概要 |
13年度実績 アポミオグロビンへの金属錯体触媒導入法の構築 1.人工金属酵素の構築 本年度は、本来ヘムが存在するミオグロビン(Mb)の活性中心キャビティーを利用して非共有結合的にシッフベース錯体を導入することに成功した。嫌気下でのUV-visやESI-TOFMSスペクトルからは金属錯体が蛋白質キャビティーに挿入された1:1複合体を形成している事が確認できた。特に中心金属を鉄、コバルト、クロムとし、シッフベース錯体の置換基を変えることによって複合体の熱的安定性を増加させ、収率良く単離精製するシステムを構築した。 2.触媒活性 上記の人工金属酵素を用いて不斉酸化反応を行った。過酸化水素を酸化剤としたクロム錯体によるチオアニソールの酸化反応では、緩衝溶液中、錯体のみでは反応性をほとんど示さないが、複合体を形成することによって不斉酸化反応が進行した。特に、活性中心キャビティーのアミノ酸残基を置換したH64D/A71G Mbと[Cr^III(5,5'-Bu_2-salophen)]^+の複合体は野生型Mbとの複合体に比べて、触媒活性、選択性共に向上する事が分かった。従って、本研究では、非共有結合により金属錯体をタンパク質キャビティーに挿入することで人工金属酵素の構築に成功し、プロテイン、配位子デザインの組み合わせによって反応性、選択性を制御することを可能とした。 3.今後の予定 以上の結果をまとめ論文投稿準備中である。また、本研究をさらに発展させ、ミオグロビン以外の蛋白質や有機金属錯体との複合化による人工金属酵素の構築を行っている。これらのUV-visやESI-TOFMSスペクトルによる1:1複合体の確認段階はすでに終了し、触媒活性の評価を進行中である。
|