本年度はETR1のXAFS測定・解析に向けた以下の3点の関する準備を行った。 (1)タンパク質試料の調製 一般に、植物由来のタンパク質を大腸菌で発現させる事は難しいとされており、ETR1の発現系も、現在はイーストによるものしか知られていない。しかし、イーストを用いた場合、得られるタンパク量は少なく、測定に用いる試料の量も制限されてしまう。そこで、大腸菌による大量発現系の構築は重要であった。本研究ではタグを工夫することで、ETR1のセンサードメイン(銅イオンが含まれているドメイン)のみではあるが、植物由来のタンパク質であるETR1を大腸菌で大量に発現させることに成功した。ICP分光分析の結果から、大腸菌により発現させたETR1も0.7〜0.8個/分子の銅イオンを含んでいることが分かった。XAFS測定にはこの大腸菌による発現系を用いて調製したものを用いることとする。 (2)モデル化合物の合成 いくつかの構造既知の銅錯体を合成した。 (3)XAFS測定法の開発 大量発現系の構築には成功したが、XAFS測定用に濃縮を行うと、やはり、測定に用いる試料の量は極端に少なくなってしまう。そこで、本研究では、1μL程度でXAFS測定が可能となる測定法の開発をSPring-8のビームラインで行った。タンパク質結晶の回折実験を行うために開発されたクライオループを加工することで、1μL以下で従来と同等なスペクトルが得られる測定法の開発に成功した。現在、その詳細を論文にまとめており、近く、投稿予定である。 本年度は上記のように、測定・解析に向けた準備を整えることができた。来年度から、ETR1の大量発現系を用いて調製した試料でXAFS測定・解析を行っていく。`
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